
一年で最も寒さが厳しくなる大寒の時期は、冷えや疲れがピークに達し、春まで不調を引きずりやすいもの。実は、この大寒こそが「一年分の回復力」を仕込む最後の重要なタイミングです。この記事では、薬膳の視点から、なぜ大寒に体が不調になりやすいのかを解き明かし、攻めの養生から「立て直し」へ意識を転換する重要性も解説。体を休ませて吸収力を高める食事術や、無理なく体を「元の良い状態に戻す」具体的な薬膳的アプローチをご紹介します。温性食材の選び方、胃腸を労わる調理法、良質な睡眠や温活習慣を通じて、冬の不調を乗り越え、来るべき春に向けて万全の体調を整える方法が分かります。
この記事を書いた人

石倉 るみ (公式アンバサダー)
薬に頼らず整える薬膳🌿
栄養士歴18年、薬膳料理教室を主宰するママ栄養士です。
スポーツ栄養インストラクターとして、
家庭でも実践できる「簡単薬膳」を発信しています。
軽度ADHDの息子を育てる中で、心と体を整える食卓の大切さを実感。
同じように頑張る方々に寄り添いながら、健やかな毎日を支える食を提案しています。
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大寒の時期、なぜ「冷え・疲れ」がピークに達するのか
一年で最も寒さが厳しくなる期間として知られる大寒は、二十四節気の最後の節気であり、暦便覧には「冷ゆることの至りて甚だしきときなれば也」と記されています。この時期は、まさに寒さのピークを迎え、私たちの体は冷えや疲労を感じやすくなります。この極寒の時期に、なぜ体調が崩れやすくなるのか、薬膳の視点からその理由を深く掘り下げていきましょう。
薬膳が考える冬の体と大寒の特性
薬膳では、冬は自然界が草木枯れ、動物が冬眠する「閉蔵(へいぞう)」の季節と捉えられます。この時期、人間もまた自然の一部として、体のエネルギーを蓄え、消耗を抑える「守りの養生」が重要とされています。五臓の中でも「腎(じん)」の働きが活発になる時期であり、五臓六腑から運ばれてきた精華物質を貯蔵する大切な役割を担います。
しかし、大寒の時期は、極度の寒さから「寒邪(かんじゃ)」が体内に侵入しやすくなります。寒邪は陰の性質を持つ邪気であり、体の陽気を傷つけ、気血の巡りを悪くする特徴があります。これにより、悪寒、胃痛、腹痛、冷えなどの症状が現れやすくなります。特に、体表をバリアのように守る「衛気(えき)」が寒さによって弱まると、邪気の侵入を食い止める力が低下し、風邪などの不調を引き起こしやすくなります。
さらに、寒邪の「凝滞性(ぎょうたいせい)」は気血の流れを滞らせ、肩こりや腰痛といった痛みを引き起こし、その「収引性(しゅういんせい)」は筋脈や関節の痙攣を招き、四肢の屈伸不利につながることもあります。
春まで不調を引きずりやすい体のサインとは
大寒の時期に体が冷えや疲れを蓄積すると、その不調は春になっても引きずりやすくなります。これは、冬の間に消耗したエネルギーが十分に回復せず、春の訪れとともに活発になる体の働きに追いつけないためです。以下のようなサインが見られる場合、体が不調を抱え、春に向けての立て直しが必要な状態であると考えられます。
| 体のサイン | 薬膳的解釈と関連する不調 |
|---|---|
| 手足の冷えや朝のだるさ | 体を温める陽気が不足し、エネルギーが十分に巡っていない状態です。温めてもなかなか改善しない場合は、体質的な冷えが進行している可能性があります。 |
| 肩こり・腰痛などの体の痛み | 寒さにより血の巡りが悪くなり、気血の凝滞が生じているサインです。特に下半身は陰の性質を持つため、冬は冷えやすく、足腰の不調につながりやすいとされます。 |
| 食後に眠くなる、胃もたれしやすい | 消化吸収を担う「脾(ひ)」の働きが低下している可能性があります。冬は胃腸が疲れやすく、消化に負担がかかる食事はさらなる疲労を招きます。 |
| 気力が出ず、何もする気がしない | エネルギーである「気」と「血」が不足している状態です。冬に無理をすると、体のエネルギーを蓄えるべき時期に消耗が進み、春に向けての活力が失われやすくなります。 |
| ドライアイや疲れ目、頭痛 | 冬は血流が悪くなりやすく、特に目の細かな血管にも影響が出やすいとされます。陰液(潤い)の不足も関連していることがあります。 |
| 気分が沈みがち、イライラしやすい | 冬の間に蓄積されたストレスや気の滞りが、春の「肝(かん)」の働きが活発になる時期に表面化しやすくなります。肝は感情のバランスを整える役割を担っています。 |
大寒にこそ「一年分の回復力」を仕込む薬膳の知恵
攻めの養生から「立て直し」への意識転換
一年で最も寒さが厳しく、冷えや疲労がピークに達する大寒の時期は、私たちの体が最もデリケートな状態にあります。この時期に無理な「攻めの養生」を行うと、かえって体に負担をかけ、不調を長引かせてしまう可能性があります。薬膳では、この大寒の時期こそ、「立て直し」を最優先し、体力の回復と春への準備に焦点を当てるべきだと考えます。
冬の間に溜め込んだ疲労や冷えをリセットし、春に向けての土台を築くためには、体をいたわり、内側から整える意識が不可欠です。無理に変えようとするのではなく、本来の健康な状態へと「戻す」ことを目標にすることで、一年分の回復力を着実に仕込むことができます。
体を休ませ吸収力を高める薬膳的アプローチ
大寒の薬膳では、体を休ませ、消化吸収能力を最大限に高めることが重要なポイントです。胃腸に負担をかけない優しい食材を選び、滋養を効率よく体に取り込むための調理法を心がけます。
| アプローチの目的 | 具体的な薬膳の考え方 |
|---|---|
| 体を休ませる | 過度な刺激を避け、心身の緊張を和らげる食材や調理法を選びます。消化にエネルギーを使わせすぎず、体の回復に集中させます。 |
| 吸収力を高める | 胃腸の働きを助け、食べたものの栄養を効率よく体に取り込める状態を目指します。体を温め、血行を促進することも吸収力向上に繋がります。 |
| 「戻す」意識 | 不調を力ずくで改善するのではなく、体が本来持っているバランスを取り戻すことを重視します。自然治癒力を引き出すようなアプローチです。 |
この時期にしっかりと体を整えることで、春先の環境変化にも揺らがない、健やかな体づくりが可能になります。疲労困憊の体に鞭打つのではなく、優しく労わる薬膳こそが、大寒を乗り越える秘訣です。
大寒の薬膳で体を「戻す」具体的な食事術
大寒の時期は、冷えと疲れが蓄積した体を内側から温め、消耗したエネルギーを補うための食事が非常に重要です。この時期の食事は、春に向けての体調の土台作りとなります。薬膳の知恵を取り入れ、体を「戻す」意識で日々の食卓を整えましょう。
冷え・疲れを和らげる温性食材の選び方
薬膳では、食材をその性質によって「温性」「熱性」「平性」「涼性」「寒性」に分類します。大寒の時期には、体を温め、巡りを良くする「温性」の食材を積極的に取り入れることが推奨されます。これにより、冷えによる血行不良や代謝の低下を防ぎ、疲労回復を促します。
| 食材の種類 | 具体的な食材例 | 期待される効果(薬膳的視点) |
|---|---|---|
| 根菜類 | ごぼう、にんじん、れんこん、大根(加熱調理)、生姜 | 体を温め、気血の巡りを促進。消化を助け、滋養強壮。 |
| 香辛料・薬味 | 生姜、にんにく、ねぎ、唐辛子、山椒 | 発汗を促し、体を芯から温める。気の巡りを良くし、冷えによる痛みや凝りを和らげる。 |
| 肉類 | 鶏肉、羊肉(ラム、マトン) | 体を温め、気力を補う。疲労回復や体力増進に役立つ。 |
| 穀物・豆類 | もち米、黒豆、小豆 | 胃腸を温め、滋養強壮。体力の回復をサポート。 |
| その他 | くるみ、なつめ | 体を温め、腎を補う。気血を養い、精神安定にも。 |
これらの食材を日々の食事にバランス良く取り入れることで、冷えに負けない体作りを目指しましょう。
胃腸を労わり吸収力を高める調理法
体が冷え切っている大寒の時期は、胃腸の働きも低下しがちです。そのため、消化吸収に負担をかけず、効率よく栄養を摂取できる調理法を選ぶことが大切です。胃腸を労わることで、摂取した栄養がしっかりと体に吸収され、回復力へとつながります。
薬膳スープや煮込み料理で体を芯から温める
体を芯から温めるには、時間をかけて煮込むスープや煮込み料理が最適です。食材の栄養が煮汁に溶け出し、温かい状態で摂取することで、消化器への負担を減らしつつ、効率的に栄養を吸収できます。特に、前述の温性食材を組み合わせることで、相乗効果が期待できます。
例えば、鶏肉と生姜、ねぎ、大根などをじっくり煮込んだ薬膳スープは、冷え切った体を内側から温め、疲労回復を助けます。また、とろみがつくまで煮込んだ野菜たっぷりのポトフやシチューなども、胃腸に優しく、体を温める効果が高いでしょう。
旬の根菜や発酵食品で免疫力をサポート
大寒の時期に旬を迎える根菜類は、食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富で、体の機能を整える上で欠かせません。これらの根菜は、加熱することで甘みが増し、消化もしやすくなります。煮物や蒸し料理として積極的に食卓に取り入れましょう。
また、腸内環境を整えることは、免疫力向上に直結します。味噌、醤油、納豆、漬物といった発酵食品は、腸内の善玉菌を増やし、消化吸収を助けるだけでなく、病原菌から体を守る免疫機能の強化にも貢献します。温かい味噌汁や、漬物を添えるなどして、毎日の食事に取り入れることを意識してください。
大寒の時期に実践したい薬膳的ライフスタイル
良質な睡眠で「回復力」を高める工夫
大寒の時期は、自然界が最も陰の気が強まる時。私たちの体もそれに合わせて、活動を控え、エネルギーを蓄えるべきだと薬膳では考えます。特に睡眠は、日中の活動で消耗した「気」や「血」を補い、体の回復力を高めるために不可欠な時間です。
良質な睡眠を確保するために、以下の点を意識してみましょう。
- 就寝前のリラックスタイム:寝る前にスマートフォンやパソコンの画面を見るのを避け、温かいハーブティー(カモミールなど)を飲んだり、軽いストレッチを行ったりして、心身を落ち着かせましょう。
- 寝室環境の整備:快適な室温(18~20℃が目安)と湿度を保ち、遮光カーテンなどで光を遮断し、静かで暗い環境を整えることが重要です。
- 入浴のタイミング:就寝の1~2時間前に湯船に浸かり、体温が下がり始めるタイミングでベッドに入ると、自然な眠りにつきやすくなります。
質の良い睡眠は、免疫力の向上にも繋がり、春に向けて不調を引きずらない体を作る土台となります。
体を温める入浴法と簡単な温活習慣
体の内側から温める食事術と並行して、外側からも体を温めることが大寒の養生では非常に大切です。「冷え」は「気」や「血」の流れを滞らせ、不調の原因となると薬膳では考えられています。
薬膳的入浴法で芯から温まる
一日の終わりには、ゆっくりと湯船に浸かり、体の芯まで温めましょう。おすすめの入浴法は以下の通りです。
| 入浴法 | 実践ポイント | 薬膳的効果 |
|---|---|---|
| 半身浴 | 38~40℃程度のぬるめのお湯に、みぞおちまで浸かり20~30分。 | 体への負担が少なく、血行促進、リラックス効果。 |
| 薬湯 | 生姜の薄切りや柚子の皮、陳皮(みかんの皮を乾燥させたもの)などを布袋に入れて湯船に浮かべる。 | 体を温める作用が強化され、香りでリラックス効果も高まる。 |
入浴後は湯冷めしないよう、すぐに体を拭き、温かい服装で過ごしましょう。
日常生活に取り入れたい温活習慣
特別な時間を作らなくても、日々の生活の中で実践できる温活はたくさんあります。
- 首・手首・足首の「三首」を温める:これらの部位には太い血管が通っており、温めることで効率的に体全体を温めることができます。マフラーや手袋、レッグウォーマーなどを活用しましょう。
- 軽い運動やストレッチ:室内でできる簡単な体操やストレッチを習慣にすることで、血行が促進され、体の巡りが良くなります。特に、肩甲骨周りや股関節を動かすと効果的です。
- 足湯:寝る前に15分程度の足湯を行うと、足先の冷えが和らぎ、全身が温まって寝つきが良くなります。アロマオイルを数滴垂らすのもおすすめです。
これらの温活習慣は、大寒の時期に滞りがちな「気血水」の流れをスムーズにし、春に向けての体の準備を助けます。
まとめ
一年で最も冷え込み、疲れがピークに達する大寒は、春まで不調を引きずりやすい時期です。この大切な時期の過ごし方が一年間の体調を左右するため、薬膳の知恵で「立て直し」を最優先しましょう。体を休ませ、吸収できる状態へと「戻す」意識を持つことが肝要です。温かい食事や良質な睡眠、温活を通じて心身を整えることで、大寒の養生は一年分の回復力を仕込み、健やかな春を迎えるための最後の好機となるでしょう。
この記事を書いた人

石倉 るみ (公式アンバサダー)
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